戻る 別の部屋に行く

 闇の中ディレックは走っていた
 生まれたままの姿で、ただひたすらに走っていた
 魔族達に村を襲撃され捕らえられた彼だったが、牢番の鍵の掛け忘れをいち早く察知し
 数人の仲間と共に逃げ出した
 見つかれば一網打尽にされてしまう
 彼らは散り散りに逃げる事にした
 今、ほかの皆は逃げ果せているのだろうか
 そんな事を考えながら、この果てしない闇の回廊の中を青年はひた走る。
 どれくらい走ったのだろう
 闇の中に部屋の明かりを見つけた
 闇の中に作られた部屋から漏れた光だろうか
 ディレックは静かに部屋を覗き込んだ
「あひぁ、ひぁ、ご主人様ぁ、ご主人様の精液を俺の汚いケツマンコに注いで下さいぃ〜」
 四つんばいになった全裸の青年が
 腰を振りながらみだらに媚を売る。
 彼の視線の先には複数の男たちがニヤニヤと微笑み、彼を見下ろしていた
「いい感じに調教出来たな」
「あぁ、コレなら娼館に出しても問題ないだろう」
 男たちの言葉を耳にしながらも
 青年は男たちの足にすがりつき、彼らのペニスに顔をうずめる
 その表情に、人間の威厳はかけらも泣く
 ただ、悦楽におぼれた獣の笑みがあるだけだった
 もはや、彼は元の人間に戻る事は無いだろう
 それだけは、ディレックの頭にも理解できた
 長居は無用だ
 見つかれば自分も同じ運命をたどる
 ディレックは静かにその場を後にした。

 魔族達が経営する娼館がどこかにあるという
 そこに送られる男娼を調教する部屋、それがここなのだ
 おぞましい光景に怯えながら、青年は出口を求め回廊を突き進んだ。