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 暗い暗い部屋に迷い込んだ
 ディレックは目を凝らしながら出口を求めさ迷う
 この部屋には無数の石像が立ち並んでいる
 みな全裸の青年像で、あるものは芸術的に、あるものは卑猥に
 様々な形で作られている
 その全てが生きているように精巧で、今にも動き出しそうな代物であった。
 ディレックが思わず像に触れようとした矢先、ふと何者かの話し声が彼の耳に飛び込んできた。
「ふむ、今回も、良い仕事をしておりますな」
「へぃ、有難うございます!!」
 像の影から覗くと
 そこには燕尾服にシルクハット、ステッキを片手にした品の良い老紳士と
 もう一人は商人風の魔族
 老紳士は周囲の石像郡を見渡し、満足そうに微笑む
「やはり、私はこうして石像にしていつまでも愛で続けるのが一番良いと思いますな」
 言い目の前の石像の体をやさしく撫でる
 刹那、ディックは息を呑んだ
 老紳士がめでるその石像は
 彼と共に捕まり、数日前に連れて行かれた、彼の親友の姿であった
 ガバガバに開ききったアヌスを己の指で開き、卑猥な格好で、ほうけた笑みを浮かべたまま
 親友はその無様な姿を永遠にさらし続けていた
 彼は同時に理解した
 今までがそうであったように、あそこで横たわる彼も
 もぅ・・・・・
「あぁ・・・・ぁああああ・・・・」
 頭を鈍器で殴られたような衝撃
 思わず口から嗚咽が漏れ、よろよろと背後に後ずさる。
 逃げなければ、逃げなければ
 あそこで石と成り果てた親友の為にも、自分は生きてここを脱出してやる
 吐き出してしまいそうな悲鳴を飲み込み
 ディックは静かにその場を立ち去ろうとした
 が
「あぁ、気をつけて下され、不用意にあちこちぶつかると、石像が倒れて駄目になってしまいますからな」
 老紳士の言葉が、背後からまっすぐディレックを射抜いた
 ギクリと身を震わせ背後を振り返る
 そして愕然とする
 老紳士の眼は、しっかりとディッレクを捕らえていた
 見つかった、という事よりも
 彼の胸をすさまじい恐怖が支配していた
 今まで見てきた部屋の青年達のように、自分も壊されてしまう
「あ、あ、あぁ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
 すさまじい絶叫と共に
 はじけるように走り出すディレック
「かくれんぼの次は追いかけっこすかな・・・・・貴族はその様な遊びは好まぬのですがなぁ・・・・」
 カール上の髭を弄ぶと老紳士は静かに歩き始めた。